陶芸家ルーシー・リーが大好きです。
1902年、ウィーンのユダヤ系の家庭に生まれた彼女は、第二次世界大戦中イギリスに亡命し、ロンドンに工房を構え、たくさんの素敵な陶芸作品を残しました。
彼女の代表的な作品は、狭い高台から徐々に広がっていく、富士山を逆さまにしたような優雅なシルエットが特色の鉢で、一度見たら忘れられません。形もさることながら、その色がまた、とてもエレガント。ピンクもブルーも黄色も上品で、めちゃくちゃ可愛いのです。
日本に紹介したのはデザイナーの三宅一生さん。30年ぐらい前だと思うのですが、陶芸の冊子に写真が掲載されていたのを、とてもよく覚えています。
それ以来、彼女の作品が大好きになった私は、ちょっとでも写真に写っているとすぐに、これはルーシーのだ!と、気になって仕方ありません。
日本で巡回作品展が行われた際には、山口県(2011年)、兵庫県(2015年)と、県を跨いで追いかけたものです。
ルーシー・リーは、知れば知るほど魅力が増します。作り方がまずびっくり。素焼きをしないのです。生の素地に、刷毛で釉薬を塗っていきます。
釉薬は一回ずつ使い切り。少量を測ってボウルに作ります。あの素敵な色は、まるでチューブから絵の具を混ぜるように、その都度作っているのです。
彼女が使っていた釉薬の調合ノートには、その分量がびっしり書いてありました。現在残されている12冊のノートには、陶芸のことのみで、私的なことは一切書いていなかったとか。
本当に驚くことばかりです。きっと陶芸に没頭していたのでしょう。
19歳でろくろに恋をして、88歳で倒れるまで作陶を続けたルーシー・リー。晩年は窯入れのため、小さな体が窯の中に落ちないように、足首を紐で錘に括っていたとか。
おでこを出してエプロンをつけて、ニコニコ楽しそうに作っている写真を見ると、直接会って、質問攻めにしたくなります。
本人には会えないですが、たくさんの作品に会えるルーシー・リー展が、どこかでまた開催されることを願っています。
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