これほど楽しい作業はない、と思うほど、窯出しは大好きです。
スピードに乗って土を形にする、ろくろの作業も楽しい。でもその後の作業は地味なものが続きます。高台削り、素焼きの窯入れ、素焼き、素焼きの窯出し、釉薬がけ、本焼きの窯入れ、本焼き、本焼きの窯出し、高台処理、とこのような感じです。
どの作業ももちろん大変なのですが、中でも本焼きの窯入れは細心の注意を払い行います。どの段のどこに何を置くのか、とても重要です。
そして高温に上げる本焼き。夏場は何もしてなくても暑いのに、窯の周りは灼熱です。その大変な作業を経ての窯出しです。
どんな色になってるかな。釉薬が溶け過ぎて流れていないかな。気になることがあるときはドキドキです。
窯が冷めてから蓋を開け窯出しをしながら、一喜一憂。「あ〜」とか「わ〜」とか独り言をぶつぶつ言いながら、出てきた器たちを一個一個並べて確認します。

出してすぐに思ったことと、時間が経ってからもう一度手にして思うことが違っている場合もあります。出してすぐは「駄目だな」と思っても、後から案外良いじゃないか、と思いなおす。逆もあるのですが、そんなことも含めて、窯出しはおもしろいです。
時間的には「え、もうおわり?」となるほど、あっという間です。こうして焼き上がった器たちには、永遠の命が授けられるわけです。
いつも体験者の方にお話しするのですが、素焼きぐらいの温度で焼かれた釉薬のかからない縄文土器でさえ、一万年以上残っているのです。施釉され、1250度で焼かれた器は未来永劫、地球に残り続けます。(確かめる術もないですし)私たちの寿命とは比べものになりません。
国宝にはならなくても家宝になりますよ、と必ずお話しします。そんな器が生まれてくる、もしかしたら出産のような作業だから、楽しいのかもしれません。
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